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【佐藤徹広】次世代に経験を残したい――。国際大会で金賞を受賞した農家の米作りにかける想い

2014.08.29 カテゴリブログ,佐藤徹広

相馬市今田の米農家 佐藤徹広さん

福島県は、米作りが盛んな県。この米どころ福島から、昨年、新米の美味しさを決める国際大会「米・食味分析鑑定コンクール」で金賞を受賞した生産者が2名います。ひとりは福島県岩瀬郡天栄村の内山正勝さん、そしてもうひとりが、福島県相馬市今田の佐藤徹広さんです。受賞したのはコシヒカリでした。

 

佐藤さんは、これまでいわき市の建設会社で働く傍ら、米農家を兼業してきましたが、2010年に会社を定年退職。これを機に米作りに専念するようになりました。翌年、震災が起きたものの、希望を捨てず米栽培を継続――。そして2013年、この国際大会で金賞を受賞したのです。名誉ある賞を相馬の米が、それも震災後に受賞したという事実は、他の農家の方々にとっても励みになるはずです。

 

今年も金賞を獲得すべく、そして新たな米作りを次世代に伝えるべく、日々田んぼと向き合う佐藤さんにお話を聞きました。

 

約4,000点の中から選ばれた米

昨年度の「米・食味分析鑑定コンクール」に出品された米は3,954点。これらの米を機械と人が選別し、金賞を選びます。

 

佐藤さん:米を作ってる農家って「ウチの米は全部絶対美味しいよ」って言うわけ(笑)。この大会では、それを客観的に見るために機械で計るんですよ。食味分析計ってやつで。それで美味しさを表す食味値という点数が出てくる。この点数の上から40番までの米が最終審査に進むんです。それを今度は食味鑑定士という方が食べ比べて、40点の中からまた順位を決めます。機械だと甘味とか、風味、歯ざわりなんかが分からないから。最後はやっぱり“ベロメーター”ですね(笑)。去年は、金賞は17点選ばれました。

 

佐藤さんは資料を使いながら説明してくれた

・佐藤さんは資料を使いながら説明してくれた

 

4,000点から金賞に選ばれるのはたった17点。そのひとつに選ばれた佐藤さんの米の特徴はどこにあるのでしょうか。

 

佐藤さん:稲作の指導であちこちたくさんの米を食べてきた方には「佐藤さんの米は甘いね」と言われました。これが特徴なのかなぁ。私はほら、私の家の米しか食べてないから、比較しにくくて(笑)。外食なんかした時は、自分の米との違いは感じますけど。

 

やはり手塩にかけて育てたお米。美味しさへの自信が感じられます。

 

相馬から金賞を続けて出したい

佐藤さんが田んぼを構えるのは相馬市内の今田という地区。稲がすくすくと育ってくれそうな見通しのよい広々とした土地です。

 

佐藤さん:この辺で作る米はうまいんですよ。水と土がいいからね。私はこの辺りの米を特化したいんです。米・食味分析鑑定コンクールも、続けて相馬から金賞を出したい。やっぱり一回だけじゃあ定着しないので。(福島県の)天栄村とか(長野県の)木島平村なんかは常連なんですが、相馬はそうではない。名前の強さがないので、受賞し続けるには相当な努力が必要になるとは思うのですが。
自分が育てた米だけではなく、相馬の米の美味しさを伝えたい――。淡々と話す佐藤さんですが、お話を聞いていると、語り口とは対照的な熱い想いが伝わってきます。

 

ご自身の田んぼを案内する佐藤さん

・実際に佐藤さんの育てた田んぼを案内してもらった

 

種もみを田んぼに直接播く栽培方法「直播(ちょくは)」を採用

佐藤さんの米は、種もみを田んぼに直接播く直播(ちょくは)という栽培方法で作られます。
佐藤さん:直播というのは、文字通り種もみを田んぼに規則正しく播いていくんです。上手に播けば、苗を植えた田んぼと見分けがつかないくらい、きれいな田んぼになるんですよ。

 

直播で育てた稲
・直播で育てた稲

 

佐藤さん:うちの米は、もともと直播で作っていたわけではないんです。(農業機械のメーカーである)クボタが、直播の実演をする予定だった田んぼが津波の被害で使えなくなってしまったということで、うちに声をかけてきたんです。それが始まりです。

 

小さく軽い種もみを播く……。雨や風で流されることはないのでしょうか。素人目には気になるところですが、その対策もあるといいます。

 

佐藤さん:流されないように、種もみに鉄の粉でコーティングするんです。種もみが見えなくなるので、スズメが食べてしまうといった被害もなくなります。コーティングする鉄の量を減らしてみたこともあるのですが、その時はスズメに食べられましたね(笑)。

 

今でこそ笑ってお話されていますが、長年米作りを続けてきた佐藤さんにとっても直播は震災後に始めた栽培方法。コーティングの例に限らず、はじめは不安や失敗、困難もあったと言います。

 

佐藤さん:苗で植えれば無難なんです。間違いなく収穫に結びつくから。これ(直播)は生えてくるかどうかが不安で。芽が出てきてやっと、ああってほっとしますね。芽が出ないことはないんですが。なんでも諦めなければ必ず芽が出るからね(笑)。あとは雑草の管理が難しい。苗で植えた場合は体系立って管理ができるのですが。直播だと、よーいどんで芽も雑草も生えてくるので……。

 

初めの年は大変なことばかりでしたが、直播をはじめて今年で4年目。安定した米作りができるようになりました。

 

佐藤さん:(始めた当初と現在ではノウハウが)もちろん全然違います。経験を蓄積してきたので。

 

そう言って佐藤さんは、1冊のノートを見せてくれました。そこには、いつ種もみを播いたか、どんな肥料をどれだけ使用したかなど、米作りの経過が細かにまとめられていました。これまでの経験を数値と文章でまとめ、「こうすればうまくいく」という感覚を“見える化”しているのです。失敗を含め、経験を無駄にしない。それが佐藤さんの米作りの特徴です。

 

ゴールは次世代に“これからの米作り”を残すこと

直播は従来の栽培方法に比べ、米作りにかける労力をかなり抑えられると言います。苗をハウスで栽培する方法だと、苗の箱をハウスや機械に何度も運ぶ必要があるからです。これが、米作りで大変な作業のひとつだそうですが、直播だとこの工程をすべて省くことができる。

 

佐藤さん:次の世代のことを考えてるんです。ここらへんも高齢化が進んでるし、若い人もあんまり米作りをやっていないから。そうすると、一人当たりの扱い面積が増えてくる。だからいずれ直播になっていくはずなんです。その時に、次に直播をやる人たちに「こういう状態だったらこうなるから大丈夫だよ」ってのを教えてやりたい。やっぱり初めては誰でも心配だから。

 

4年目の直播による米作りも、もうすぐ収穫の時期。「収穫の時期になったらまたおいで」と、佐藤さんは言ってくれました。

64歳となる今も、日々米作りに励む佐藤さん。今年は10月1日から受付を開始し、10月15日以降、発送ができるとのこと。秋、相馬本家を通じて皆さんにご案内させていただきます。

 

*福島県で作られるお米はすべて放射性物質の検査をしています。

*なお、佐藤さんが育てるお米は検査の結果、毎年不検出となっております。

 

 

稲に花が咲き始めていました

・取材時は稲にちょうど花が咲き始めていました

 

佐藤さんご夫婦

・取材後、佐藤さんのお宅で育てているお野菜をおすそわけしていただきました。ありがとうございました!

 

*2014/9/24の収穫直前に改めて佐藤さんの田んぼを訪れました。その際の記事は以下からお読みいただけます。

収穫直前、黄金色に染まる今田の田んぼ

 

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