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【大江製菓】かつてはおでんも? 手づくりの温かさが伝わる素朴な和菓子

2015.11.25 カテゴリブログ,事業者,大江製菓

相馬市中村の大江製菓。麦つきせんべいが看板商品

桜の木々が立ち並ぶ小泉川の近くに工場・販売所を構える大江製菓。ここは老若男女幅広い世代に人気の「相馬麦つきせんべい」をメインに、季節の菓子を扱う和菓子店です。店主のご自宅も兼ねている店舗は、飾らず懐かしい雰囲気で、街のお菓子屋さんという佇まい。

相馬市中村の大江製菓。麦つきせんべいが看板商品
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看板商品である「麦つきせんべい」は、小麦粉、卵、バター、ピーナッツなどのシンプルな素材と昔ながらの機械を使い、半分機械・半分人の手で焼き上げる、ほんのり甘いおせんべいです。この麦つきせんべいに限らず、大江製菓の和菓子は、手仕事の温もりを感じる素朴で飽きのこないものばかり。

相馬市中村の大江製菓の大江富子さん。麦つきせんべいが看板商品
今回は気さくな店主の大江富子さんに、お店が歩んできた歴史や看板商品について、また現在抱える不安や販路拡大に向けての取り組み等について、聞いてきました。

 

なんでも扱うお菓子屋さんからせんべい屋に

―大江製菓はどのようにして始まったのでしょうか?

 

大江さん:もともとウチの旦那は、相馬あられという製菓店に勤めてたの。あの、「二つ三つやっか~」のCMで有名な(*)。それで、そこがなくなってしまって独立したのよ。昭和49年に。このウチ(現在の店舗)には昭和53年の宮城県沖地震の時に移ってきて。それ以来ここでずうっとやってるわけ。
*現在は放送されていません

 

―現在は「大江製菓」と聞くと「麦つきせんべい」とパッと浮かびますが、創業当初から販売していたんでしょうか?

 

大江さん:そう、昭和49年からね。この名前はね、相馬の民謡で「麦搗き唄(*)」ってのがあるのよ。ウチの旦那が民謡好きだったもんだからそれにヒントを得て名前を付けたわけ。ほら、せんべいは麦の粉だからね。
*麦を杵で搗(つ)く際に唄われた相馬地方の民謡

相馬市中村の大江製菓の大江富子さん。麦つきせんべいが看板商品

―なるほど。当時からこの「麦つきせんべい」が主力だったんですね。

 

大江さん:いや、ここに店を移す前は色々やってたのよ、たい焼きだのおでんだの(笑)。ウチの旦那はなんでも開発するのが好きで。たい焼きは、浅草の河童橋に行って機械を買ってきてウチで焼いてたの。子どもだましの駄菓子なんかもやってたね。

 

―子どもだまし(笑)。

 

大江さん:それで、こっち(現在の店舗)に移ってからは、色々とやめて、せんべいがメインになったの。最近は、相馬の特徴を出そうと思って、小女子や青のりを使ったせんべいも開発しました。どちらも海の香りがして美味しいんですよ。

せんべいのほかに、季節に応じた和菓子も販売

大江さん:麦つきせんべいのほかには、ゆべしもやっています。三色ゆべし。「かんのや」って知ってる?

 

―はい、郡山に本社がある、県内大手の製菓会社ですよね。

 

大江さん:そうそう。ウチのゆべしは、もともとあそこで教わったの。生地はこだわってて、混じりけのない上新粉だけを使っていて、食感に特徴があります。餡は、胡麻餡と、赤と白の漉し餡を詰めてるの。

 

―確かに、かんのやのゆべしも三角形ですよね。ほかにもありますか?

 

大江さん:あとは3月の節句用の花餅。これは1月に入ると始まります。そして3月を過ぎると柏餅ね。ほら、こういうのって年中通して売っているところもあるじゃないですか。でも、時期ものだからは、うちはその時期にだけ作るんです。前は大福もやっていたんだけど、今は注文を受けた時にだけやってるの。

相馬市中村の大江製菓。麦つきせんべいが看板商品

震災の影響と息子さんの頑張り

大江さん:今までは相馬市外でも結構販売していたんですよ。富岡町とか浪江町のいこいの村(*)とかヨークベニマルとか、市外7~8店舗くらいかな。でも震災で全部ダメ。駅のキヲスクなんかでも昔は何十万と売っていたんだけどねえ。今は鉄道(*)が通ってないじゃない。原町と相馬間が通ってはいるけれど、学生だけだもの……。
*いこいの村なみえ:浪江町にある宿泊施設
*JR常磐線は震災の影響により一部区間の運転が休止されている

 

―原発事故の影響で立ち入りできなくなってしまった地域の取引先が一気になくなってしまった、と。

 

大江さん:そう。それと今後常磐高速が開通(*)するじゃない。それで(相馬)に降りないんじゃないかという心配があって。これまでだとあさり採りとか海水浴とかあったでしょう。でも今はそれができないから。観光資源をなんとかしないといけない。みんなどんな風に考えているんだろうねえ。商売やっている人は、私と同じように感じていると思うよ。
*参考:常磐自動車道の復旧状況

 

―ちなみに、市外からの注文の現状はいかがでしょうか

 

大江さん:息子が取ってきてくれています。息子は宇都宮にある大丸製菓の営業マンなんです。それで、ウチ(大江製菓)を営業所にしているの。

 

―え?

 

大江さん:そういう条件で入社したんです。だからウチは大丸製菓の営業所でもあるんです。社員は息子一人しかいないけど(笑)。それで息子が営業所長さん(笑)。もともとウチの旦那は相馬あられを辞めてから大丸製菓にお菓子づくりを教えに行っていたの。そういう関係があって、それ以来お付き合いしているんです。

相馬市中村の大江製菓。麦つきせんべいが看板商品

 

―震災後、落ち込んだ売上を息子さんがカバーしている状況なんですね。

 

大江さん:そうなの。それと、今度松島の水族館(*)が新しくなるらしいんだけど、そこに商品を入れないかって話をもらって。明日商談会に行ってくるんです。その後は所用で東京に行くんだけど。あとはイベントにもちょくちょく参加していますね。これまでは遠出したことはなかったんですが、東京の日本橋にも行きましたし。
マリンピア松島水族館

 

―非常にお忙しいそうですね……。

 

大江さん:そうなのよ、なんだか忙しいの。最近特に(笑)。

 

 

大江さんは、お話を聞きにお邪魔した際も梱包作業に追われていました(ご対応ありがとうございました……)。取引先の減少という問題に直面しながらも、相馬ならではの商品をと新商品を開発する姿勢には商売人の熱い魂が感じられ、決してクヨクヨせず一生懸命に売上回復を目指す姿には、話を聞く側が元気づけられました。

商品はオンラインでもご購入いただけますが、ぜひお店にも足を運び、大江さんにもお会いしていただきたいな、と思います。

 

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店舗情報

福島県相馬市にある和菓子店「大江製菓」。 半自動の手焼きで仕上げる温もりあるおせんべいが人気 【大江製菓】かつてはおでんも? 手づくりの温かさが伝わる素朴な和菓子 https://www.soma-brand.jp/2015/02/11/oeseika/ #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA